ア 現存する図像なし

ギリシャ · 怪物

アルゴス・パノプテス

全身に目を持つ牧人。眠るエキドナを殺し、ヘラによって牝牛の姿のイオの番人に据えられたが、ゼウスの命を受けたヘルメスに殺された。

全てを見る者 · ὁ πανόπτης

仕える主
ヘラ — イオの番人として
討った相手
エキドナ — 眠っているところを捉えた、アルカディアを荒らした雄牛、サテュロス
討たれた相手
ヘルメス — アポロドロスでは石、オウィディウスでは鉤形の剣
象徴
全身の目、頭をめぐる百の目、アルカディアの雄牛の皮、白い牝牛、ミュケナイ人の杜のオリーブの木、ユノの鳥の尾にある目

全身の目

アポロドロスは『ビブリオテケ』第二巻でアルゴス・パノプテスに行き着く。そこで彼はイナコスの家系をたどっている。系譜は、ゼウスとニオベの子である年長のアルゴスを通る。この人物は王国を継ぎ、ペロポネソスに自分の名にちなんでアルゴスの名を与えた。この年長のアルゴスにはエクバソスという子があり、エクバソスにはアゲノルという子があった。アゲノルの子がアルゴス・パノプテスであり、アポロドロスは短い一節のなかで、彼に名と体と四つの事績を与えている。

τούτου δὲ Ἄργος ὁ πανόπτης λεγόμενος. εἶχε δὲ οὗτος ὀφθαλμοὺς μὲν ἐν παντὶ τῷ σώματι, ὑπερβάλλων δὲ δυνάμει τὸν μὲν τὴν Ἀρκαδίαν λυμαινόμενον ταῦρον ἀνελὼν τὴν τούτου δορὰν ἠμφιέσατο, Σάτυρον δὲ τοὺς Ἀρκάδας ἀδικοῦντα καὶ ἀφαιρούμενον τὰ βοσκήματα ὑποστὰς ἀπέκτεινε. λέγεται δὲ ὅτι καὶ τὴν Ταρτάρου καὶ Γῆς Ἔχιδναν, ἣ τοὺς παριόντας συνήρπαζεν, ἐπιτηρήσας κοιμωμένην ἀπέκτεινεν. ἐξεδίκησε δὲ καὶ τὸν Ἄπιδος φόνον, τοὺς αἰτίους ἀποκτείνας

「アゲノルにはアルゴスという子があり、これは全てを見る者と呼ばれた。彼は全身に目を持ち、並外れて強かったので、アルカディアを荒らしていた雄牛を殺してその皮をまとった。またサテュロスがアルカディア人に害をなし、その家畜を奪ったとき、アルゴスは立ち向かってこれを殺した。タルタロスとガイアの娘エキドナは、通りがかりの者をさらうのを常としたが、眠っているところを捉えられてアルゴスに殺されたとも言われる。彼はまたアピスの殺害の仇を討ち、罪ある者たちを死に至らしめた」 — アポロドロス『ビブリオテケ』二・一・二、J・G・フレイザー 英訳

最初の文は、父と名を同時に示す。τούτου δὲ Ἄργος ὁ πανόπτης λεγόμενος、すなわちアゲノルにはアルゴスという子があり、これは全てを見る者と呼ばれたである。語 λεγόμενος、すなわち呼ばれたは、πανόπτηςが通り名であることを示し、この通り名が彼を曽祖父である王から区別する。次の節がその理由を述べる。εἶχε δὲ οὗτος ὀφθαλμοὺς μὲν ἐν παντὶ τῷ σώματι、すなわち彼は全身に目を持っていた。アポロドロスは数を挙げない。

次に力が来る。ὑπερβάλλων δὲ δυνάμει、すなわち並外れて強かった、そして事績が続く。アルゴス・パノプテスは τὸν μὲν τὴν Ἀρκαδίαν λυμαινόμενον ταῦρον、すなわちアルカディアを荒らしていた雄牛を殺し、τὴν τούτου δορὰν ἠμφιέσατο、つまりその皮を身にまとった。次に、サテュロスがアルカディア人に害をなして家畜 τὰ βοσκήματα を奪ったとき、アルゴスは立ち向かい、これを殺した。ὑποστὰς ἀπέκτεινεである。フレイザーはこれを立ち向かってこれを殺したと訳す。

三つ目の事績は、語りの調子が変わって現れる。λέγεται δὲ ὅτι、すなわちとも言われるである。アポロドロスはこの事績を伝えるだけで、保証はしない。犠牲者はエキドナ、タルタロスとガイアの娘で、ἣ τοὺς παριόντας συνήρπαζεν、すなわち通りがかりの者をさらうのを常とした者である。アルゴスは彼女を ἐπιτηρήσας κοιμωμένην 殺した。分詞 ἐπιτηρήσας は、彼が機会をうかがっていたことを告げ、κοιμωμένην は、機会が来たとき彼女が眠っていたことを告げる。フレイザーは文を裏返し、彼女は眠っているところを捉えられてアルゴスに殺されたとする。四つの事績のうち、見張ることにかかっているのはこれだけである。

最後の事績は前の節を振り返る。そこではポロネウスの子アピスが支配を僭主政に変え、テルクシオンとテルキスに殺された。ἐξεδίκησε δὲ καὶ τὸν Ἄπιδος φόνον、すなわちアルゴスはその殺害の仇を討った。τοὺς αἰτίους ἀποκτείνας、すなわち罪ある者たちを死に至らしめてである。こうしてこの一節は、彼に通り名と体と四つの殺しを与える。まだ任務は与えない。

イオの番人

任務は次の節で来る。アポロドロスはまずイオの家系を示し、次にゼウスがヘラの女祭司であった彼女をどう誘惑したかを語る。ヘラは二人を見つけ、ゼウスは触れるだけでイオを白い牝牛に変え、彼女を知らなかったと誓った。この牝牛のところで、アルゴス・パノプテスが物語に戻ってくる。

Ἥρα δὲ αἰτησαμένη παρὰ Διὸς τὴν βοῦν φύλακα αὐτῆς κατέστησεν Ἄργον τὸν πανόπτην, ὃν Φερεκύδης μὲν Ἀρέστορος λέγει, Ἀσκληπιάδης δὲ Ἰνάχου, Κέρκωψ δὲ Ἄργου καὶ Ἰσμήνης τῆς Ἀσωποῦ θυγατρός· Ἀκουσίλαος δὲ γηγενῆ αὐτὸν λέγει. οὗτος ἐκ τῆς ἐλαίας ἐδέσμευεν αὐτὴν ἥτις ἐν τῷ Μυκηναίων ὑπῆρχεν ἄλσει. Διὸς δὲ ἐπιτάξαντος Ἑρμῇ κλέψαι τὴν βοῦν, μηνύσαντος Ἱέρακος, ἐπειδὴ λαθεῖν οὐκ ἠδύνατο, λίθῳ βαλὼν ἀπέκτεινε τὸν Ἄργον, ὅθεν ἀργειφόντης ἐκλήθη

「しかしヘラはゼウスから牝牛を自分のために求め、全てを見る者アルゴスをその番人に据えた。ペレキュデスはこのアルゴスをアレストルの子と言い、アスクレピアデスはイナコスの子と言い、ケルコプスはアルゴスとアソポスの娘イスメネの子と言う。アクシラオスは彼を地から生まれた者と言う。彼は牝牛を、ミュケナイ人の杜にあったオリーブの木につないだ。しかしゼウスはヘルメスに牝牛を盗むよう命じ、ヒエラクスが口外したためにヘルメスはそれを密かに行えなかったので、石を投げてアルゴスを殺した。そこから彼はアルゲイポンテスと呼ばれた」 — アポロドロス『ビブリオテケ』二・一・三、J・G・フレイザー 英訳

ヘラはゼウスに牝牛を求め、その上に番人を置く。φύλακα αὐτῆς κατέστησεν Ἄργον τὸν πανόπτην、すなわち全てを見る者アルゴスをその番人に据えたである。通り名は彼とともに戻ってくる。この節で彼の目を思い出させるものは、それだけである。

そこでアポロドロスは物語を止め、このアルゴスが誰の子かを問い、四つの答えを挙げる。ὃν Φερεκύδης μὲν Ἀρέστορος λέγει、すなわちペレキュデスは、彼をアレストルの子と言う。Ἀσκληπιάδης δὲ Ἰνάχου、すなわちアスクレピアデスは、彼の父をイナコスと言う。Κέρκωψ δὲ Ἄργου καὶ Ἰσμήνης τῆς Ἀσωποῦ θυγατρός、ケルコプスは彼に二人の親、アルゴスとアソポスの娘イスメネを与える。最後に Ἀκουσίλαος δὲ γηγενῆ αὐτὸν λέγει、アクシラオスは彼が地から生まれたと言い、したがって父をまったく与えない。四つのどれも、一節前のアポロドロス自身の系譜にある父アゲノルではない。アポロドロスはほかの答えを並べるだけで、それと争わない。イナコスは物語のなかにもう一つ場所を持つ。アポロドロスは、年代記家カストルと多くの悲劇詩人がイオをイナコスの娘としたと伝えている。

アポロドロスの記す見張りは素朴である。οὗτος ἐκ τῆς ἐλαίας ἐδέσμευεν αὐτὴν ἥτις ἐν τῷ Μυκηναίων ὑπῆρχεν ἄλσει、すなわち彼は牝牛を、ミュケナイ人の杜にあったオリーブの木につないだ。

ゼウスは殺せとは命じない。Διὸς δὲ ἐπιτάξαντος Ἑρμῇ κλέψαι τὴν βοῦν、すなわちヘルメスに牝牛を盗むよう命じる。盗みは、誰かが喋ったために失敗する。μηνύσαντος Ἱέρακος、つまりヒエラクスが秘密を漏らしたのであり、フレイザーは彼が口外したと言う。ἐπειδὴ λαθεῖν οὐκ ἠδύνατο、ヘルメスは密かに行えなかった。そこで彼は代わりに番人を殺す。λίθῳ βαλὼν ἀπέκτεινε τὸν Ἄργον、すなわち石を投げてアルゴスを殺した。この語りでは、殺害は盗みが失敗したあとの第二の策である。

最後の節は、殺害を名に変える。ὅθεν ἀργειφόντης ἐκλήθη、すなわちそこから彼はアルゲイポンテスと呼ばれた。アポロドロスは、ヘルメスの称号の一つをこの話で説明する。ヘシオドスは『仕事と日』のパンドラの造りの場面で、同じ称号を用いる。彼はヘルメスを διάκτορον Ἀργειφόντην と呼び、エヴリン゠ホワイトはこれを案内役、アルゴス殺しと訳す。ヘシオドスはその箇所で、この称号にまつわる物語は語らない。

頭をめぐる百の目

オウィディウスは『変身物語』第1巻でこの話を語る。ミラーの英語では、ゼウスはジョーヴ、ヘラはユノである。ジョーヴはついに牝牛の姿の娘をユノに渡すが、ユノは疑いを捨てない。ジョーヴと、さらなる裏切りを恐れたからである。そこで彼女は番人を探し、オウィディウスの番人はアルゴス・パノプテスである。

donec Arestoridae servandam tradidit Argo. Centum luminibus cinctum caput Argus habebat: inde suis vicibus capiebant bina quietem, cetera servabant atque in statione manebant. Constiterat quocumque modo, spectabat ad Io: ante oculos Io, quamvis aversus, habebat

「アレストルの子アルゴスに、番をさせるために引き渡すまで。さて、アルゴスの頭は百の目に取り巻かれており、目は二つずつ交替で眠りにつき、ほかの目は見張って持ち場にとどまった。どのように立っていても、彼はイオを見ていた。背を向けていても、イオは目の前にあった」 — オウィディウス『変身物語』1.624–629、F・J・ミラー 英訳

オウィディウスは父を一語で挙げる。Arestoridae、すなわちアレストルの子である。これはアポロドロスの一覧にあるペレキュデスの答えであり、オウィディウスはほかの答えを挙げない。

次の行は体を示すが、アポロドロスとは一致しない。Centum luminibus cinctum caput Argus habebat、すなわちアルゴスの頭は百の目に取り巻かれていた。アポロドロスは数を挙げず、目を ἐν παντὶ τῷ σώματι、つまり全身に置いた。オウィディウスは数、centum、すなわち百を挙げ、すべての目をcaput、すなわち頭の周りに置く。二つのテクストは違いを説明せず、この項もどちらかを選ばない。

オウィディウスはまた、目がどのように見張るかを語る。inde suis vicibus capiebant bina quietem、すなわち目は二つずつ交替で眠りについた。cetera servabant atque in statione manebant、すなわちほかの目は見張って持ち場にとどまった。アルゴス・パノプテスは決して完全には眠らず、決して完全には起きていない。目が頭の周りにあるので、どちらを向いていても変わらない。ante oculos Io, quamvis aversus, habebat、すなわち背を向けていても、イオは目の前にあった。

続く行は、見張りの働きを示す。昼間、アルゴスは牝牛に草を食ませ、日没には牝牛を閉じ込めて恥辱の縄を首にかける。イオは父イナコスの川に来て、二人は共に泣くが、星の目のアルゴスは彼女をより遠くの牧場へ追い立てる。それから彼は高い山頂に座り、あらゆる方向を見張る。

剣とユノの鳥

オウィディウスでは、アルゴス・パノプテスの死は天から命じられる。オウィディウスのゼウスであるジョーヴは、もはやイオの苦しみに耐えられず、輝くプレイアスが産んだ息子を呼び、アルゴスを殺せと命じる。この命令は、アポロドロスの命令と違って、殺せという命令である。ミラーがメルクリウスと呼ぶヘルメスは、羊飼いの姿で地上に降り、山羊の群れと葦笛を携える。ユノの番人アルゴスは、その珍しい音を気に入り、見知らぬ者に岩の上の自分の隣に座るよう求める。ヘルメスは見張るあの目を抑えるために語り、笛を吹く。アルゴスは眠気と戦う。目の一部を眠らせ、ほかの目で見張りながら、葦笛はどのように作られたのかと尋ねる。そこでヘルメスはシュリンクスの物語を始める。パンに追われ、最初の笛の沼の葦になったニンフである。彼はそれを語り終えない。

Talia dicturus vidit Cyllenius omnes succubuisse oculos adopertaque lumina somno. Supprimit extemplo vocem firmatque soporem languida permulcens medicata lumina virga. Nec mora, falcato nutantem vulnerat ense qua collo est confine caput, saxoque cruentum deicit et maculat praeruptam sanguine rupem. Arge, iaces, quodque in tot lumina lumen habebas, exstinctum est, centumque oculos nox occupat una. Excipit hos volucrisque suae Saturnia pennis collocat et gemmis caudam stellantibus inplet

「メルクリウスがこの話を続けようとしたとき、あの目がすべて屈し、眠りに閉ざされているのを見た。ただちに彼は言葉を止め、眠気に弱ったあの目の上に魔法の杖をなでて、アルゴスの眠りを深める。そしてすぐさま、鉤形の剣でうなだれた首を、頭が首に接するまさにその場所で打ち、血まみれのまま岩の上から投げ落とし、切り立つ崖を血で汚す。アルゴスよ、おまえは倒れ伏す。おまえの多くの火のうちにあった光はすっかり消え、ひとつの闇がおまえの百の目を満たす。サトゥルニアはこれらの目を取り、自分の鳥の羽に置き、その尾を星のような宝石で満たした」 — オウィディウス『変身物語』1.713–723、F・J・ミラー 英訳

この行でオウィディウスがヘルメスに与える名はCylleniusであり、ミラーはメルクリウスと書く。ヘルメスが最初に見るのは、見張りの失敗である。vidit Cyllenius omnes succubuisse oculos、すなわちあの目がすべて屈しているのを見た。語omnesは、前の箇所の決まりを破る。そこでは二つの目が同時に眠り、残りが見張っていた。ここではすべての目が閉じている。ヘルメスは杖で眠りを深める。languida permulcens medicata lumina virga、すなわち眠気に弱ったあの目の上に魔法の杖をなでてである。

死はすぐに続く。falcato nutantem vulnerat ense、すなわち鉤形の剣でうなだれた首を打つ。一撃はqua collo est confine caput、すなわち頭が首に接するまさにその場所に落ち、百の目を載せた頭を奪う。オウィディウスの武器は鉤形の剣で、番人は眠っている。アポロドロスの武器は投げた石で、眠りには触れなかった。この項は両方を記録する。

次にオウィディウスは、死んだ番人に語りかける。Arge, iaces、すなわちアルゴスよ、おまえは倒れ伏す。光はおまえの多くの火のうちにあって、すっかり消え、centumque oculos nox occupat una、すなわちひとつの闇がおまえの百の目を満たす。最初の箇所の数は、死んだ目の数としてここに戻る。

目は失われない。Excipit hos volucrisque suae Saturnia pennis collocat、すなわちサトゥルニアはこれらの目を取り、自分の鳥の羽に置いた。サトゥルニア、すなわちサトゥルヌスの娘は、ここでのオウィディウスによるユノの呼び名である。彼女は鳥の尾を星のような宝石、gemmis caudam stellantibusで満たす。オウィディウスはその鳥の名を挙げない。読者はそれを孔雀として知っているが、オウィディウスはvolucrisque suae、すなわち自分の鳥としか書かない。アポロドロスでは、物語は目のないまま進む。次にヘラは牝牛に虻を差し向け、イオは陸と海をさまよって、ついにエジプトに着く。

言及している項目