インドラはヴェーダの神々(デーヴァ)の戦士王であり、『リグ・ヴェーダ』にもっとも頻繁に呼びかけられる神である。そこでは他のいかなる神よりも多くの讃歌が彼に捧げられている。彼は天空を統べ嵐を司り、神匠トヴァシュトリが鍛えた雷霆ヴァジュラを振るい、白象アイラーヴァタ、あるいは赤褐色の馬に牽かれた戦車に乗って戦いに赴く。彼の中心神話は、宇宙の水を呑み込み山中に堰き止めていた蛇の魔物ヴリトラを討つことである。インドラはヴァジュラでヴリトラを打ち砕き、河川を再び流れさせる。『リグ・ヴェーダ』はこの行為を宇宙の秩序を打ち立てた根源的な偉業として讃えている。
ヒンドゥー教のもっとも初期にあたるこのヴェーダの層において、インドラは事実上の神々の王であり、雨、土壌の豊穣、そして戦における勝利と結びついていた。古代の王たちは彼の主権にあやかる儀礼によって即位が聖別された。しかし後のプラーナの伝統では彼の重要性は後退し、ヴィシュヌとシヴァが信仰の主たる対象となる。インドラはしだいに、至高の神としてふるまうよりも、競合する聖仙や魔物から自らの王座を守ることに汲々とする、格下で不安げな天界の統治者として描かれるようになっていく。
इन्द्रस्य नु वीर्याणि प्र वोचं यानि चकार प्रथमानि वज्री । अहन्नहिमन्वपस्ततर्द प्र वक्षणा अभिनत्पर्वतानाम् ॥१॥
「われはインドラの雄々しき御業を、雷霆を振るう者が最初に成し遂げしその御業を語らん。彼は龍を討ち、しかるのちに水を解き放ち、山なす奔流の水路を切り開いた。」 — 『リグ・ヴェーダ』1.32.1、ラルフ・T・H・グリフィス訳