ヘルは女神であると同時に、彼女が治める国そのものの名でもある。それはユグドラシルの根の一つの下、遠くニヴルヘイムに広がる、冷たく影に閉ざされた国であり、オーディンによって彼女に与えられたものである。彼女はロキと女巨人アングルボザの娘であり、彼女とその怪物じみた兄弟――狼フェンリルと大蛇ヨルムンガンド――が巨人族のもとで育てられていたことをオーディンが知ったとき、彼は三体すべてを追放した。ヘルは冥界の底へと送られ、栄えある戦いにではなく病や老いによって死んだ者たちを住まわせる、九つの世界を支配する権能を与えられた。
スノッリは彼女の家財を目録でも作るように書き並べるのだが、そこに並ぶ品はどれも、欠乏の名を与えられている。
Éljúðnir heitir salr hennar, Hungr diskr hennar, Sultr knífr hennar, Ganglati þrællinn, Ganglöt ambátt, Fallandaforað þresköldr hennar, er inn gengr, Kör sæing, Blíkjandaböl ársali hennar. Hon er blá hálf, en hálf með hörundarlit. Því er hon auðkennd ok heldr gnúpleit ok grimmlig
「ヘルはニヴルヘイムへ投げ落とされ、九つの世界を支配する権能を与えられた。彼女のもとへ送られてくる者たち——すなわち病や老いによって死んだ者たち——に、すべての住処を割り当てるためである。……その広間は〈霙(みぞれ)寒〉と呼ばれる。その皿は〈飢餓〉、その刃は〈饑饉〉。〈怠け者〉はその下僕、〈ふしだら〉はその侍女、〈つまずきの穴〉はその敷居——そこを通って人は入る——、〈病〉はその寝台、〈輝ける災厄〉はその帳。彼女は半分が青黒く、半分が肉の色をしており(それによってたやすく見分けがつく)、そしてはなはだ陰鬱で険しい。」 — 『スノッリのエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」34、ブロドール訳
留意すべきは、ブロドールがこの広間の名を——古ノルド語の Éljúðnir を Sleet-Cold〈霙寒〉と——意味に訳してしまっている点である。後世の翻訳者たちは原名をそのまま残す。
神々のうちもっとも愛されたバルドルでさえ、ロキの策略によって死んだのち、彼女の広間へとやって来た。ヘルは、この世のあらゆるものが彼のために涙を流すならばという条件でのみ彼を解き放つことに同意したが、一人の女巨人がそれを拒んだため、バルドルはとどまることとなった。父や兄弟たちとは異なり、現存する史料においてヘルはラグナロクに能動的な役割を果たさない――彼女はただ、決して立ち去ることのない死者たちの上に、忍耐強く、心動かされることなく君臨し続けるのみである。