ゲリュオンの図像
AI-generated (gpt-image-2)

ギリシャ · 怪物

ゲリュオン

大洋のほとりの島エリュテイアに住む、クリュサオルの息子。ヘシオドスでは三つの首を持ち、アポロドロスでは三人の男が一つの体に結び合わさっている。その赤い牛はヘラクレスの十番目の難業となり、牛を追い立てられている最中に射殺された。

三つの首を持つ者

討たれた相手
ヘラクレス — 矢によって、牛を追い立てている最中に
象徴
三つの頭、腰で一つに結ばれた三人の男の体、赤い牛、矢

クリュサオルの息子

ゲリュオンの父は、一つの殺害の場面で世に生まれ出た。ペルセウスの物語のうちで、アポロドロスは、この英雄が眠れる三人のゴルゴンを見つけ、そのうち唯一死すべき身であったメドゥーサの首を刎ねた次第を語る。首が落ちるやいなや、ἐκ τῆς Γοργόνος ἐξέθορε Πήγασος πτηνὸς ἵππος, καὶ Χρυσάωρ ὁ Γηρυόνου πατήρ——ゴルゴンから翼ある馬ペガソスと、ゲリュオンの父クリュサオルとが躍り出た。この箇所で、アポロドロスはクリュサオルについてそれ以上何も語らない。彼を、その息子によって名指すのみである。ヘシオドスは同じ家系を『神統記』のわずか八行のうちに与えており、その行はゲリュオンの誕生から死へとまっすぐに続く。

Χρυσάωρ δ᾽ ἔτεκεν τρικέφαλον Γηρυονῆα μιχθεὶς Καλλιρόῃ κούρῃ κλυτοῦ Ὠκεανοῖο. τὸν μὲν ἄρ᾽ ἐξενάριξε βίη Ἡρακληείη βουσὶ παρ᾽ εἰλιπόδεσσι περιῤῥύτῳ εἰν Ἐρυθείῃ ἤματι τῷ ὅτε περ βοῦς ἤλασεν εὐρυμετώπους Τίρυνθ᾽ εἰς ἱερὴν διαβὰς πόρον Ὠκεανοῖο Ὄρθον τε κτείνας καὶ βουκόλον Εὐρυτίωνα σταθμῷ ἐν ἠερόεντι πέρην κλυτοῦ Ὠκεανοῖο

「されどクリュサオルは、栄えある大洋の娘カリロエーと愛によって結ばれ、三つの首を持つゲリュオネースを生んだ。彼を、強大なヘラクレスは、海に囲まれたエリュテイアにて、その足取り重き牛どものかたわらで討ち果たした。彼が幅広き額の牛どもを聖なるティリュンスへと追い立て、大洋の渡り瀬を越え、オルトロスと牧人エウリュティオンとを、栄えある大洋のかなたの薄暗い住処にて討ち取った、その日のことであった。」 — ヘシオドス『神統記』二八七〜二九四、エヴリン゠ホワイト 英訳

両者の記述は両親について一致する。ヘシオドスにおいて母はカリロエー、κούρῃ κλυτοῦ Ὠκεανοῖο、栄えあるオケアノスの娘であり、アポロドロスも同じ組を名指す。Χρυσάορος καὶ Καλλιρρόης τῆς Ὠκεανοῦ、クリュサオルとオケアノスの娘カリロエーである。父を通してゲリュオンはメドゥーサの孫であり、母を通してオケアノスの孫である。

ヘシオドスはゲリュオン自身にはただ一語、τρικέφαλον、三つの首を持つ、を与えるのみである。次の一文が彼を殺す。τὸν μὲν ἄρ᾽ ἐξενάριξε βίη Ἡρακληείη、そこでの βίη Ἡρακληείη、ヘラクレスの力とは、英雄自身を名指す叙事詩的な言い方である。この一節の残りはすべて、死をめぐる情景に属する。ヘシオドスはそれを、海に囲まれたエリュテイア、περιῤῥύτῳ εἰν Ἐρυθείῃ、ゲリュオンの牛のかたわらに置き、ヘラクレスが牛どもを聖なるティリュンスへと追い立て、大洋の渡り瀬を越え、オルトロスと牧人エウリュティオンとを、σταθμῷ ἐν ἠερόεντι、薄暗い住処にて、大洋のかなたで討ち取った日のこととする。八行のうちにゲリュオンは生まれ、そして死ぬ。三つの首のほかには、詩は彼の両親が誰であったか、彼が何を所有していたか、そして彼が死んだ日に誰が殺されたかを語るのみである。

一つの体に結ばれた三人の男

ヘシオドスはゲリュオンの首を数える。アポロドロスは彼の体を描く。彼はこの襲撃の全体を、ヘラクレスの難業の第十として語り、これらの典拠のうちで彼の記述こそがゲリュオンについて最も詳しいものである。

δέκατον ἐπετάγη ἆθλον τὰς Γηρυόνου βόας ἐξ Ἐρυθείας κομίζειν. Ἐρύθεια δὲ ἦν Ὠκεανοῦ πλησίον κειμένη νῆσος, ἣ νῦν Γάδειρα καλεῖται. ταύτην κατῴκει Γηρυόνης Χρυσάορος καὶ Καλλιρρόης τῆς Ὠκεανοῦ, τριῶν ἔχων ἀνδρῶν συμφυὲς σῶμα, συνηγμένον εἰς ἓν κατὰ τὴν γαστέρα, ἐσχισμένον δὲ εἰς τρεῖς ἀπὸ λαγόνων τε καὶ μηρῶν. εἶχε δὲ φοινικᾶς βόας, ὧν ἦν βουκόλος Εὐρυτίων, φύλαξ δὲ Ὄρθος ὁ κύων δικέφαλος ἐξ Ἐχίδνης καὶ Τυφῶνος γεγεννημένος. πορευόμενος οὖν ἐπὶ τὰς Γηρυόνου βόας διὰ τῆς Εὐρώπης, ἄγρια πολλὰ <ζῷα> ἀνελὼν Λιβύης ἐπέβαινε, καὶ παρελθὼν Ταρτησσὸν ἔστησε σημεῖα τῆς πορείας ἐπὶ τῶν ὅρων Εὐρώπης καὶ Λιβύης ἀντιστοίχους δύο στήλας. θερόμενος δὲ ὑπὸ Ἡλίου κατὰ τὴν πορείαν, τὸ τόξον ἐπὶ τὸν θεὸν ἐνέτεινεν· ὁ δὲ τὴν ἀνδρείαν αὐτοῦ θαυμάσας χρύσεον ἔδωκε δέπας, ἐν ᾧ τὸν Ὠκεανὸν διεπέρασε. καὶ παραγενόμενος εἰς Ἐρύθειαν ἐν ὄρει Ἄβαντι αὐλίζεται. αἰσθόμενος δὲ ὁ κύων ἐπ᾽ αὐτὸν ὥρμα· ὁ δὲ καὶ τοῦτον τῷ ῥοπάλῳ παίει, καὶ τὸν βουκόλον Εὐρυτίωνα τῷ κυνὶ βοηθοῦντα ἀπέκτεινε. Μενοίτης δὲ ἐκεῖ τὰς Ἅιδου βόας βόσκων Γηρυόνῃ τὸ γεγονὸς ἀπήγγειλεν. ὁ δὲ καταλαβὼν Ἡρακλέα παρὰ ποταμὸν Ἀνθεμοῦντα τὰς βόας ἀπάγοντα, συστησάμενος μάχην τοξευθεὶς ἀπέθανεν. Ἡρακλῆς δὲ ἐνθέμενος τὰς βόας εἰς τὸ δέπας καὶ διαπλεύσας εἰς Ταρτησσὸν Ἡλίῳ πάλιν ἀπέδωκε τὸ δέπας

「第十の難業として、彼はエリュテイアからゲリュオンの牛を連れ帰るよう命じられた。さてエリュテイアとは大洋近くにある島であり、いまではガデイラと呼ばれている。この島には、クリュサオルとオケアノスの娘カリロエーの子であるゲリュオンが住んでいた。彼は三人の男が一つに結び合わさった体を持ち、腰のところで一つにまとまり、脇腹と腿のところから三つに分かれていた。彼は赤い牛を所有しており、その牧人はエウリュティオンであり、番犬はテュポンがエキドナとの間にもうけた二つの首を持つ犬オルトロスであった。そこで彼はゲリュオンの牛を求めてヨーロッパを行き、多くの猛獣を滅ぼしてリビュエに足を踏み入れ、タルテッソスを過ぎたところで、旅の記念として、ヨーロッパとリビュエの境に、互いに向かい合う二本の柱を立てた。しかし旅の途上、太陽に炙られて、彼はその神に向けて弓を引き絞った。神はその剛胆さに感心して、彼に黄金の杯を与え、彼はその杯で大洋を渡った。そしてエリュテイアに着くと、アバス山に宿営した。すると犬が彼に気づいて襲いかかったが、彼は棍棒でこれを打ち、犬を助けに来た牧人エウリュティオンをも殺した。そこにいてハデスの牛を飼っていたメノイテースが、事の次第をゲリュオンに知らせた。彼は、牛を追い立てている最中のヘラクレスにアンテムース川のほとりで追いつき、戦いを構えたが、矢に射られて死んだ。そしてヘラクレスは、牛をその杯に乗せてタルテッソスへと渡り、杯を太陽に返した。」 — アポロドロス『ビブリオテケ』二・五・一〇、フレイザー 英訳

アポロドロスは場所から始める。エリュテイアは Ὠκεανοῦ πλησίον κειμένη νῆσος、大洋の近くに横たわる島であり、彼はそれがいまではガデイラと呼ばれていると付け加える。ἣ νῦν Γάδειρα καλεῖται。それから彼はその住人へと移る。ゲリュオンは τριῶν ἔχων ἀνδρῶν συμφυὲς σῶμα、三人の男が一つに結び合わさった体、を持つ。その体は συνηγμένον εἰς ἓν κατὰ τὴν γαστέρα、腹のところで一つにまとまっており、フレイザーはこれを腰と訳し、そして ἐσχισμένον δὲ εἰς τρεῖς ἀπὸ λαγόνων τε καὶ μηρῶν、脇腹と腿のところから三つに分かれている。この一文は、三人の男がどこで結び合わされ、どこで分かれるかを述べ、そこで終わる。アポロドロスは首を数えない。ヘシオドスは首だけを、τρικέφαλον という一語で数える。どちらの著者も、姿全体を描いてはいない。

体の次に、アポロドロスは家の者たちを挙げる。εἶχε δὲ φοινικᾶς βόας——ゲリュオンは赤い牛を所有しており、それを世話する者が二人いた。エウリュティオンが牧人であり、βουκόλος Εὐρυτίων、番犬、φύλαξ、はオルトロス、ὁ κύων δικέφαλος、二つの首を持つ犬であり、ἐξ Ἐχίδνης καὶ Τυφῶνος γεγεννημένος、エキドナとテュポンから生まれた。ヘシオドスはオルトロスに同じ両親を与える。ゲリュオンの一節の数行後、彼はテュポンがエキドナに生ませた子らを列挙し、オルトロスがその筆頭に、主の名によって名指される。Ὄρθον μὲν πρῶτον κύνα γείνατο Γηρυονῆι。ハデスの犬ケルベロスがその一覧の第二に、ヒュドラが第三に来る。ヘシオドスがこの犬の誕生を語る頃には、詩はすでにその死を語り終えている。ヘシオドスにおいて主は三つの首を持つ。アポロドロスにおいてその犬は二つの首を持つ。

第十の難業

アポロドロスはこの一節の大半を、ゲリュオンではなく道のりに割く。ヘラクレスはヨーロッパを横切り、途中で多くの猛獣を殺し、リビュエへと入る。タルテッソスを過ぎたところで、ヨーロッパとリビュエの境に、互いに向かい合う二本の柱、ἀντιστοίχους δύο στήλας、旅の記念、σημεῖα τῆς πορείας、を立てる。それから行軍の暑さが彼を太陽へと向かわせる。θερόμενος δὲ ὑπὸ Ἡλίου κατὰ τὴν πορείαν, τὸ τόξον ἐπὶ τὸν θεὸν ἐνέτεινεν、行軍の途上でヘリオスに炙られ、彼はその神に向けて弓を引き絞る。ヘリオスは彼を罰しない。その剛胆さに感心し、黄金の杯、χρύσεον ἔδωκε δέπας、を彼に与え、その杯でヘラクレスは大洋を渡る。杯は神のものであってゲリュオンのものではなく、ヘラクレスはそれを旅のあいだだけ手にする。

エリュテイアでヘラクレスはアバス山に宿営する。ἐν ὄρει Ἄβαντι αὐλίζεται。犬が彼に気づいて襲いかかり、彼は棍棒でこれを打つ。τῷ ῥοπάλῳ παίει。牧人エウリュティオンが犬を助けに来ると、ヘラクレスは彼を殺す。

ゲリュオンはそこにいない。知らせは、別の主人に仕える一人の牧人から彼のもとへ届く。Μενοίτης δὲ ἐκεῖ τὰς Ἅιδου βόας βόσκων、そこでハデスの牛を飼っていたメノイテースが、起きたことをゲリュオンに告げる。ゲリュオンはアンテムース川のほとりで、παρὰ ποταμὸν Ἀνθεμοῦντα、すでに牛を追い立てているヘラクレスに追いつく。τὰς βόας ἀπάγοντα。戦いはわずか四語で語られる。συστησάμενος μάχην τοξευθεὶς ἀπέθανεν、彼は戦いを構え、矢に射られ、そして死んだ。アポロドロスはゲリュオンに武器も戦いにおける行為も与えない。この一節の全体を通じて、彼がすることはただ二つ、牛を追ってやって来ることと、そのために戦いを構えることだけである。

ヘラクレスの弓はこの一節に二度現れる。最初は太陽に対して、次は τοξευθεὶς の中に。そしてヘリオスの杯は、彼を行きも帰りも運ぶ。ヘラクレスは牛をその杯に積み込み、タルテッソスへと渡り、杯をヘリオスに返す。Ἡλίῳ πάλιν ἀπέδωκε τὸ δέπας。一節は δέπας という語で終わり、杯はその持ち主の手に戻る。

二つの記述が分かれるところ

ヘシオドスとアポロドロスは、両親、島、牧人、犬、そして討ち手について一致する。どちらにおいても、オルトロスとエウリュティオンは、主と同じ襲撃のうちに死ぬ。ヘシオドスは、犬が殺されたことをはっきりと述べる。Ὄρθον τε κτείνας。しかしどのようにかは語らない。アポロドロスはどのようにかを語る。棍棒の一撃によってであり、その一撃に用いる動詞は παίει、彼は打つ、である。彼は ἀπέκτεινε、彼は殺した、という語をエウリュティオンのために取っておく。犬の死を既定のものとして扱うのは、フレイザーの彼をも殺したという訳のほうである。

両者の記述は、ゲリュオンがどこでどのように死ぬかで分かれる。ヘシオドスはその死を、海に囲まれたエリュテイアの、牛のかたわらに置く。アポロドロスはそれをアンテムース川のかたわらに置き、牛はすでに動き出しており、彼はその川が島の上にあるかどうかを語らない。ヘシオドスは武器を名指さない。アポロドロスの τοξευθεὶς は、その死を矢による死とする。ヘシオドスのヘラクレスは大洋の渡り瀬を越える。διαβὰς πόρον Ὠκεανοῖο。詩はどのようにかを語らない。アポロドロスのヘラクレスはヘリオスの杯で渡る。メノイテースとハデスの牛は、アポロドロスにのみ現れる。ヘシオドスは牛追いの終着点、聖なるティリュンスを名指し、アポロドロスの一節はタルテッソスで終わり、そこで杯は太陽のもとへ戻る。

言及している項目