イーノーの図像
AI-generated (gpt-image-2)

ギリシャ · 英雄

イーノー

ヘラが送った狂気のうちに死んだ息子を抱いて一度は海に入り、そこから女神として上がってきて、溺れる見知らぬ者にヴェールを貸した——水夫たちがレウコテアーと呼ぶ、カドモスの娘。

レウコテアー

兄弟姉妹
アウトノエー、セメレー、アガウエー
討った相手
メリケルテス — ヘラが送った狂気のうちに、アポロドーロス3.4.3
象徴
不滅のヴェール、カモメ、大釜

アタマースの二番目の妻

イーノーはカドモスの四人の娘のひとりであり、アポロドーロスは彼女を二人の姉妹とともに一文で嫁がせる。イーノーはアタマースに、アウトノエーはアリスタイオスに、アガウエーはエキーオーンに。彼女自身の物語はそれより前の巻で語られており、そこでは彼女は二番目の妻として物語に入ってくる。ボイオティアを治めるアイオロスの息子アタマースには、すでにネペレーとのあいだに二人の子、息子プリクソスと娘ヘレーがいる。イーノーとのあいだにはさらに二人、レアルコスとメリケルテスをもうける。イーノーが次にすることは、最初の家族に向けられている。

ἐπιβουλεύουσα δὲ Ἰνὼ τοῖς Νεφέλης τέκνοις ἔπεισε τὰς γυναῖκας τὸν πυρὸν φρύγειν. λαμβάνουσαι δὲ κρύφα τῶν ἀνδρῶν τοῦτο ἔπρασσον. γῆ δὲ πεφρυγμένους πυροὺς δεχομένη καρποὺς ἐτησίους οὐκ ἀνεδίδου. διὸ πέμπων ὁ Ἀθάμας εἰς Δελφοὺς ἀπαλλαγὴν ἐπυνθάνετο τῆς ἀφορίας. Ἰνὼ δὲ τοὺς πεμφθέντας ἀνέπεισε λέγειν ὡς εἴη κεχρησμένον παύσεσθαι τὴν ἀκαρπίαν, ἐὰν σφαγῇ Διὶ ὁ Φρίξος

「しかしイーノーはネペレーの子らに対して謀をめぐらし、女たちに小麦を炒るよう説いた。女たちはそれを手に入れると、男たちに知られぬまま実行した。炒った小麦を蒔かれた大地は、年ごとの実りをもたらさなくなった。そこでアタマースはデルポイに人を遣わし、この不作からいかにして逃れるかを尋ねさせた。イーノーは遣わされた者たちを説き伏せ、プリクソスがゼウスに生贄として捧げられれば不作は止むであろうと神託があったと言わせた。」 — アポロドーロス『ビブリオテーケー』1.9.1、J・G・フレイザー英訳

この計画には二つの段階があり、そのどちらにおいてもイーノーは他人を通して事を行う。まず彼女は女たちに種籾を炒るよう説く。女たちはそれを κρύφα τῶν ἀνδρῶν、男たちに知られぬまま行い、大地は実りを返さなくなる。次に、アタマースがデルポイに人を遣わすと、彼女はその使者たちに近づき、彼らが持ち帰る答えは彼女のものとなる。神が実際に何と答えたのか、アポロドーロスは一度も語らない。彼が語るのはただ、イーノーが使者たちを説き伏せ、プリクソスがゼウスに生贄として捧げられれば不作は終わるであろうと神託があったと言わせたということだけである。飢饉は本物であり、人の手で作られたものだ。神託の方は偽物である。

それはほとんど成功しかける。土地の民はアタマースに、息子を祭壇へ連れて行くよう強いる。プリクソスが救われるのは、ただネペレーが彼と妹をさらい上げ、黄金の羊毛を持つ牡羊を二人に与えたからにすぎない。それはヘルメスからの贈り物であり、二人を空を通って陸と海の上へ運んでゆく。ヘレーは深みへと滑り落ちて溺れ、その海は彼女にちなんでヘレスポントスと呼ばれるようになる。プリクソスはコルキス人のもとに至り、牡羊を生贄に捧げ、その羊毛を彼らの王アイエテスに贈る。王はそれをアレスの聖林にある樫の木に釘で留める。種籾をめぐる継母の謀こそが、黄金の羊毛がコルキスに懸かることになったいきさつである。

ディオニュソスの乳母

テーバイの巻は、姉妹を通してイーノーを物語に連れ戻す。セメレーは、ゼウスがヘラのもとに来たのと同じ姿で彼女のもとに来たとき死に、カドモスの他の娘たち、イーノーもその一人だが、彼女らはセメレーがある人間の男と寝て、ゼウスについて嘘をついたのだという話を広める。しかるべきときに、ゼウス自身がディオニュソスを産み、ヘルメスに託す。姉妹たちがその神なる父を否定した子が、イーノーの家に届けられる。

ὁ δὲ κομίζει πρὸς Ἰνὼ καὶ Ἀθάμαντα καὶ πείθει τρέφειν ὡς κόρην. ἀγανακτήσασα δὲ Ἥρα μανίαν αὐτοῖς ἐνέβαλε, καὶ Ἀθάμας μὲν τὸν πρεσβύτερον παῖδα Λέαρχον ὡς ἔλαφον θηρεύσας ἀπέκτεινεν, Ἰνὼ δὲ τὸν Μελικέρτην εἰς πεπυρωμένον λέβητα ῥίψασα, εἶτα βαστάσασα μετὰ νεκροῦ τοῦ παιδὸς ἥλατο κατὰ βυθοῦ. καὶ Λευκοθέα μὲν αὐτὴν καλεῖται, Παλαίμων δὲ ὁ παῖς, οὕτως ὀνομασθέντες ὑπὸ τῶν πλεόντων· τοῖς χειμαζομένοις γὰρ βοηθοῦσιν

「イーノーとアタマースのもとへ運び、彼を娘として育てるよう説き伏せた。しかしヘラは憤り、二人に狂気を吹き込み、アタマースは年上の息子レアルコスを鹿と思って狩り、殺してしまい、イーノーはメリケルテスを煮え立つ大釜に投げ入れ、それから死んだ子とともにそれを抱えて深みへ跳び込んだ。彼女自身はレウコテアーと呼ばれ、息子はパライモンと呼ばれる。これらは水夫たちから与えられた名である。というのも、彼らは嵐に苦しむ船乗りたちを助けるからである。」 — アポロドーロス『ビブリオテーケー』3.4.3、J・G・フレイザー英訳

まず来るのは偽装である。ヘルメスは二人を説き伏せ、少年を ὡς κόρην、娘として育てさせる。アポロドーロスはその理由を何も語らず、それは誰も救わない。ヘラは ἀγανακτήσασα、憤っており、彼女が送る狂気は二人の両方に、αὐτοῖς、降りかかる。それは父と母それぞれに異なる形で及ぶ。アタマースは年上の息子レアルコスを鹿と思って狩り、殺す。イーノーはメリケルテスを εἰς πεπυρωμένον λέβητα、煮え立つ大釜に投げ入れ、それから κατὰ βυθοῦ、深みへ跳び込む。フレイザーの英訳では、彼女は行きながら大釜そのものを、死んだ子とともに運んでいることになっている。ギリシア語の分詞 βαστάσασα は目的語を名指しておらず、ただ彼女が何かを持ち上げ、μετὰ νεκροῦ τοῦ παιδὸς、死んだ子とともに海へ入ったとしか言っていない。

最後の一文が二人をともに変える。母は Λευκοθέα と呼ばれ、息子は Παλαίμων と呼ばれ、アポロドーロスはその名がどこから来るのかを語る。ὑπὸ τῶν πλεόντων、航海する者たちから、と。彼が挙げる理由は、船乗りが気にかけるであろう理由である。τοῖς χειμαζομένοις γὰρ βοηθοῦσιν、彼らは嵐に苦しむ船乗りたちを助けるから、と。息子を殺した女と、彼女に殺された息子は、同じ一文から一対の救助者として現れ出る。アポロドーロスはさらに、シシュポスがメリケルテスを記念してイストミア競技祭を創設したと付け加える。

筏の上の女神

ホメロスは彼女に『オデュッセイア』第五歌でただ一つの場面だけを与えており、これらの史料のなかで彼女が誰かのために行動する唯一の場面でもある。オデュッセウスは海上で筏に乗っており、まだカリュプソが与えた衣をまとったままであり、風は筏を両者のあいだであちらこちらへ投げつけている。ポセイドンが彼に対して怒っていることは、彼女の最初の言葉が告げるとおりである。

τὸν δὲ ἴδεν Κάδμου θυγάτηρ, καλλίσφυρος Ἰνώ, Λευκοθέη, ἣ πρὶν μὲν ἔην βροτὸς αὐδήεσσα, νῦν δ’ ἁλὸς ἐν πελάγεσσι θεῶν ἐξέμμορε τιμῆς. ἥ ῥ’ Ὀδυσῆ’ ἐλέησεν ἀλώμενον, ἄλγε’ ἔχοντα· αἰθυίῃ δ’ εἰκυῖα ποτῇ ἀνεδύσετο λίμνης, ἷζε δ’ ἐπὶ σχεδίης καί μιν πρὸς μῦθον ἔειπε· «κάμμορε, τίπτε τοι ὧδε Ποσειδάων ἐνοσίχθων ὠδύσατ’ ἐκπάγλως, ὅτι τοι κακὰ πολλὰ φυτεύει; οὐ μὲν δή σε καταφθείσει, μάλα περ μενεαίνων. ἀλλὰ μάλ’ ὧδ’ ἕρξαι, δοκέεις δέ μοι οὐκ ἀπινύσσειν· εἵματα ταῦτ’ ἀποδὺς σχεδίην ἀνέμοισι φέρεσθαι κάλλιπ’, ἀτὰρ χείρεσσι νέων ἐπιμαίεο νόστου γαίης Φαιήκων, ὅθι τοι μοῖρ’ ἐστὶν ἀλύξαι. τῆ δέ, τόδε κρήδεμνον ὑπὸ στέρνοιο τανύσσαι ἄμβροτον· οὐδέ τί τοι παθέειν δέος οὐδ’ ἀπολέσθαι. αὐτὰρ ἐπὴν χείρεσσιν ἐφάψεαι ἠπείροιο, ἂψ ἀπολυσάμενος βαλέειν εἰς οἴνοπα πόντον πολλὸν ἀπ’ ἠπείρου, αὐτὸς δ’ ἀπονόσφι τραπέσθαι.» ὣς ἄρα φωνήσασα θεὰ κρήδεμνον ἔδωκεν, αὐτὴ δ’ ἂψ ἐς πόντον ἐδύσετο κυμαίνοντα αἰθυίῃ εἰκυῖα· μέλαν δέ ἑ κῦμ’ ἐκάλυψεν

「カドモスの娘、美しい踝を持つイーノーが彼を見た。レウコテアーである。彼女はかつては人間の声を持つ人であったが、今は海の深みにあって神々の栄誉の一分を得ている。彼女はさまよい苦しむオデュッセウスを哀れに思い、飛ぶカモメのように深みから昇ってきて、しっかりと組まれた筏の上に腰を下ろし、彼に語りかけて言った。「気の毒な人よ、なぜ大地を揺るがすポセイドンはこれほど激しくあなたに怒り、あなたのために多くの災いの種を蒔いているのか。しかし彼がどれほど望もうとも、あなたを完全に滅ぼすことはないだろう。さあ、こうしなさい。あなたは分別を欠いてはいないと思われる。この衣を脱ぎ捨て、筏は風の吹くままにまかせなさい。そして両手で泳いでパイエケス人の地へたどり着くよう努めなさい。そこにこそ、あなたが逃れる運命がある。さあ、このヴェールを受け取り、胸の下に巻きつけなさい。これは不滅のものである。あなたが何かに苦しんだり、命を落としたりする恐れはない。しかし両手で陸地をつかんだなら、それを解き放ち、陸から遠く葡萄酒色の海へ投げ入れ、あなた自身は背を向けて去りなさい。」そう語ると、女神はヴェールを彼に与え、自らは再び、カモメのように、逆巻く深みへと沈んでいった。そして暗い波が彼女を覆い隠した。」 — ホメロス『オデュッセイア』5.333–353、A・T・マレー訳

ホメロスは一行半で彼女の全歴史を紹介する。彼女は Κάδμου θυγάτηρ、カドモスの娘であり、καλλίσφυρος Ἰνώ、美しい踝を持つイーノーであり、そして同時に Λευκοθέη、ἣ πρὶν μὲν ἔην βροτὸς αὐδήεσσα、かつては人間の声を持つ人であった者でもある。今は海の深みに住み、神々の栄誉の一分を保持している。ホメロスは Λευκοθέη という名を書くが、アポロドーロスは Λευκοθέα と書き、人間がいかにして女神になったのかについては何も語らない。大釜と跳躍とは、その変化についてのアポロドーロスの語りであって、ホメロスのものではない。

彼女が差し出すものは的確である。オデュッセウスは衣を脱ぎ捨て、筏を風にまかせ、パイエケス人の地へ向けて泳ぐべきである。彼は彼女の κρήδεμνον、その領巾すなわちヴェールを、胸の下に巻きつけるべきであり、それは ἄμβροτον、不滅であるから、それを身に着けているかぎり彼は溺れることがない。陸に触れたなら、それを外し、陸から遠く海へ投げ返し、背を向けねばならない。彼女もまた同じように、αἰθυίῃ εἰκυῖα、カモメのように、行き来する。水から立ち昇り、また水へと沈んでゆく。死んだ息子とともに海へ入った女が、その海から立ち昇って、見知らぬ者を溺れさせまいとするのである。

返されたヴェール

オデュッセウスは彼女を信じない。彼女が去ると、彼は自らの心に、神々のうちの誰かがまた罠を仕掛けているのかもしれないと語りかける。彼女は筏を捨てよと求めているのだから、と。そして彼は、海がそれを打ち砕くまで筏の上にとどまろうと決める。ポセイドンがその問いを彼に代わって決める。大波が筏の上に砕け、その材木を散らし、オデュッセウスは一枚の板にまたがって座り、カリュプソが与えた衣を脱ぎ捨て、ヴェールを胸の下に巻きつけ、泳ぎ出す。

ヴェールは彼女が言ったとおりのことをする。オデュッセウスが川のほとりに上陸し、息を取り戻すと、彼はヴェールを外し、それを川に落とす。流れはそれを下流へと運び去り、イーノーがそれを両手で受け取る。彼は彼女に言われたように遠く海へ投げ入れることはしなかったが、それでもヴェールは家へと帰り着く。

これこそ、水夫たちが彼女にその名を与えたゆえんの仕事である。アポロドーロスは、彼女が海の嵐に見舞われた男たちを助けると語り、『オデュッセイア』はその一人のために彼女がそれを実際に行うさまを見せる。海が溺れさせる水夫たちを連れ去る北欧のラーンと並べれば、彼女は正反対の種類の海の女神である。溺れかけた男を陸へと返す女神なのだ。

言及している項目